詳細:ホーム柵の設置に思うこと

最近、新聞報道等で鉄道駅プラットホームにホーム柵を設ける動きがクローズアップされてきました。先日も、JR東日本が2017年までに山手線の全駅に利用者のホームからの転落事故を防ぐための「可動式ホーム柵」を設ける計画との報道がありました。

バリアフリー新法に基づく国土交通省令にも定められているホーム柵やホームドアとは下のようなものです。左から順番に、可動式ホーム柵、ホームドア、新幹線・安全柵、固定柵です。

BRFC『可動式ホーム柵』BRFC『ホームドア』BRFC『新幹線・安全柵』固定柵

新幹線や地下鉄などでよくご覧になっていることと思います。ホームからの転落事故や列車との接触事故を防ぐ目的があります。設置費用の問題に限らず、列車運行上の問題点や、ホームの広さとの関係など、設置に当っては多くの障害があるそうですが、やはり事故防止には多大の効果をもたらしますので、利用者の安全のため、その拡充は大いに期待されます。

さて、視覚障害を持つ方達もホーム柵設置には大きな期待を寄せていらっしゃるのではないでしょうか。ここで私たちが強く意識したいのは、視覚障害を持つ方達が鉄道を利用するには如何に
多くの困難が立ちはだかっているか、という事実です。

駅ターミナルに着いてから、コンコースを通り抜け、乗車券を購入し、改札を通り、階段の上り下り、利用番線の判別、そして該当のホームまで行き、乗車口から乗車します。その過程を想像するだけでも困難さを理解して頂けると思いますが、さらにターミナルには雑踏、騒音、アナウンスが入り乱れます。

また、利用し慣れた駅であっても、工事中であれば状況はその方のメンタルマップを一変させてしまいます。固定物の位置が変わっただけでも位置の把握に迷いが生じるのだそうです。

雨や風などの気象条件も作用しますし、少し大きな駅であれば、複数の列車の到着・出発の喧噪で、ふっと自分の立つ位置がわからなくなることもあるそうです。点字ブロックがあるのに、と思われる方も多いでしょうが、踏み越えてしまったり、点字ブロックの右側と左側の位置関係を誤ったりすることも多いと聞きます。

視覚障害者1級の方の実に半数近くの方達が、駅ホームから転落した、或いは転落しそうな体験をしたとの調査結果もありますので、このホーム柵設置拡充の動きは、大いなる福音と言えます。

ただ、国土交通省のデータによれば、全国に約9,500ある駅の中で、ホーム柵等が設置されているのは、約4%の402駅とのことですので、駅ターミナルで危険と隣り合わせの瞬間を余儀なくされている方達への私達のお手伝いや見守りは依然必要なことと言えるのではないでしょうか。

櫛形ホームそういえば、先日駅のホームに下りる階段口で迷っておられる白杖を持ったご婦人をご案内した際、お話しを伺ったところ、よく利用する駅なので普段は人の手を借りることも無いのだが、今日は歩いていて人と激しく接触してしまい、途端に方向が把握できなくなってしまったとのことでした。

利用し慣れている駅でも、ほんのちょっとした不測の事態に遭遇するだけで、視覚障害者にとっては、いきなり困難に直面してしまう事態を私達はよく認識すべきですし、ホーム柵等が完備されてもなお、お手伝いの心を持ち続けるべきだろうと思いを新たにした次第です。
(平成20年7月13日:鴨志田)

《参考》
全国のホーム柵等設置の状況につきましては、『視障者鉄道愛好会』様のサイトをご覧になってください。なお上記ホーム柵等の写真は、同サイトより引用させて頂きました。
(駅構内の写真はウィキペディア「プラットホーム」より引用しております。)

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